あれは私がまだ大学生の頃、
夕方前の昼下がりという時間帯。
急行本川越行きで私は帰宅途中。
次の停車駅は東村山だった。
幾つか前の駅で、ヒゲがワシャワシャ生えた、
髪の毛がモシャモシャ生えた、
ダブダブの上着とズボンを履いた、
大きい布製バッグを袈裟懸けにした、
もっさいけど、浮浪者ではなさそうな、
20代~30代前半くらい?の
にいちゃんが、後ろの車両から乗り込んで来て、
平日の昼下がり、たいして混んでいない、
座席もちょっと空いている、
通路には立っている人がいない、
その電車内通路を、座っている私の目の前を、
その、にいちゃんが、ノサノサと、通り過ぎて行った。
強烈に印象が残った。
というほどではなかった。
「さっき男の人が通り過ぎましたよね?」
と訊かれたら、
「ああ、そうですね。」と答えて、
上記のような特徴が答えられるくらいの、にいちゃんではあった。
のどかな、電車の、「ダダン ダダン ダダン ダダン」が
繰り返し聞こえるだけの、静かな昼下がりの、西武新宿線本川越行き。
もう少しで、次の停車駅、東村山に着く。
と、遠くから、なにかモサモサと、声のような、音のような、
・・・聞こえてくる。 電車内通路前方からだ。 歌か?
「♪おお~ もお~~~ いい~~~~い こんだあ~~~らあ~~~」
「しれん~~~ のおお~~~ みいいい~ ちいいい~ をおおお~~~♪」
『巨人の星』である。
さっきの、にいちゃんが、誰も立っていない、ガラ空きの車内通路を、
「♪ゆう~く がああ~~~ おとお~~~こ のおお~~~
どお~ こんんん~~~ じょおおお~~~ おおお~~~~♪」
『巨人の星』を歌いながら、
えらいスピードで、
う ・ さ ・ ぎ ・ と ・ び ・ で
ぴょん ぴょん ぴょん ぴょん ぴょん ぴょん ぴょん ぴょん
座席に掛けている、 我々の目の前を、 飛び過ぎていった。
「♪まっかあああ~に(ぴょん ぴょん)
もええ~~るうう~~(ぴょん ぴょん)
おお~ じゃあ~~ の~(ぴょん ぴょん)
しるう~~ しいい~(ぴょん ぴょん)♪」
多分、当時、多摩地区在住の、
竹中直人
だったのだと思う。
いやあ、笑った笑った。
後ろの車両から前まで、通路がちゃんと空いてるか、
確かめてたんだろうな。
これね、現場でそれを見ないと、
どんな文章でも、そのインパクト、面白さは
充分に伝わらないと思う。
(2014年07月21日より再掲載)
2012年05月24日 実録:西武新宿線戦異状あり1
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1847447587&owner_id=1345445
キックスケーターで電車内走行
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=2&from=diary&id=4636440